EVO-X2などのStrix HaloのMini PCは、ホームサーバ向けAI環境として、1台で済むのでおすすめ。スペック的には64GB RAMクラスのMini PCを2台分まとめたような構成でありながら、設置面積や電源は1台分で済む。自分が買ったのは去年だったので、価格もちょうどMINI PC2台分で済んだのだが、今は、もはや4台分になってしまった。それでもこんな大容量のマシンが確実に手に入るという点でもStrix Haloのマシンはおすすめだと思う。
閑話休題
やはり出たStrix HaloのNAS。MINISFORUMからStrix Halo搭載のNAS、N5 MAXが発表された。
スペックを見る限り、
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Ryzen AI Max 395
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最大128GBメモリ
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NVMe 5ベイ
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SATA 5ベイ
というかなり強力な構成になっている。
Ryzen AI Max 395は、NVIDIAのBlackwell世代dGPUのような高い推論性能やメモリ帯域には及ばない。しかし、UMA(Unified Memory Architecture)を活用することで、大容量メモリをGPUと共有できる点が大きな特徴だ。そのため、高価なGPUを複数搭載しなくても、比較的低コストで大容量VRAM環境を実現できる。言わばAMD版のDGX Sparkのような使い方ができる製品と言える。LLMではモデルサイズばかり注目されがちだが、実際には長大なコンテキストやKV Cacheも大量のVRAMを消費する。特にAgent AIでは、会話履歴やRAGの検索結果、ツール実行結果などを保持し続けるため、推論性能以上にVRAM容量が重要になる場面が多い。その意味でRyzen AI Max 395は、絶対性能よりも「載せられる容量」を重視する用途に向いており、大規模モデルや長大なコンテキストを扱うAgent AI向けのCPU/GPUとして非常に魅力的な選択肢だと思う。
価格は
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64GBモデル: ¥447,999(税込)通常価格¥559,999
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128GBモデル:¥703,999(税込)通常価格¥879,999 出荷予定日は7月10日らしい。
決して安くはないが、NASとStrix HaloのMini PCを同時に買うことを考えたらある意味、リーズナブル。
Minisforum MS-S1 MAX 128GB RAM
¥639,999(税込)通常価格¥799,999
¥101,150(税込)通常価格¥118,990
単体価格だけ見ると高価だが、Strix Halo Mini PCとNASを別々に購入することを考えると意外と妥当な価格設定とも言える。
現時点でも在庫状況やセールのタイミングによって価格が大きく変動しており、Strix Haloの128GBモデルは特に入手性の影響を受けやすい。購入を検討しているのであれば、価格だけでなく在庫状況も含めて定期的に確認しておくことをおすすめする。
実は現在のStrix Halo搭載機は、AI用途で見る限りCPUやGPU性能の差が付きにくい。Strix Haloと搭載メモリ容量が同じであれば、性能差よりも筐体やインタフェースの違いの方が重要になる。Strix Haloの場合は、むしろ筐体設計や拡張性こそが製品の個性になる。性能という点ではどれを選んでも差がつかないので、安心して選択ができる。
しかし、この製品を見ていて思った。
これは本当に「AI NAS」なのだろうか。
むしろ、
「NAS付きStrix Halo」
と呼んだほうが正しい気がする。
AIとNASはメモリの奪い合いになる
通常のNASでは、メモリはストレージ性能向上のために使われる。
特にZFSは有名で、
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ARCキャッシュ
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メタデータキャッシュ
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スナップショット管理
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レプリケーション
などのために、積極的にメモリを利用する。
一方、Strix HaloはUMAアーキテクチャだ。
つまりメモリは、
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CPU用RAM
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GPU用VRAM
の両方として使われる。
さらに、Strix Haloは、UMAのメモリ領域を
dGPU的にVRAM容量を固定して、UMAの中からVRAMを利用
だけではなく、
UMAの中で、RAMのなかからVRAMを指定しただけ利用できるという、GTTの機能がある。
UMAでVRAM領域をGTTとして使うと、GTTの領域から指定した容量のみVRAMとして使えるため、広大なUMAのメモリ領域を効率的に利用できる。
たとえば、128GB RAMの場合
VRAM 96GB System RAM 32GB
として使うこともできるし
VRAM 2GB GTT 96GB System RAM 126GB
として使うこともできる
GPUは、VRAM 2GB + GTT 96GB 合計98GB まで利用ができる。GTTの領域のうち、GPUがメモリが確保したメモリ以外は、System RAMとして使える。ものすごく効率的にUMAを使える。
しかし、AI推論を行う場合、大容量メモリはGPUが消費する。しかしNASとして使う場合、同じメモリをZFSも消費する。見方を変えれば、結果として、AIとNAS(OS / ZFS / NASアプリ) が同じメモリを取り合う構造になる。
64GBモデルは厳しい
例えば64GBモデル。
AI用途で考えると、Qwen 3.6 35Bクラスは何とか動くだろう。しかし問題はその先だ。GPU用途として48GB近く確保すると、OSやコンテナ、ZFSに残るメモリは非常に少なくなる。
逆にGPU向けメモリを減らせば、今度はStrix Haloを選ぶ意味が薄れる。
どちらにしても中途半端になりやすい。
正直なところ、64GBモデルを買うくらいなら、Strix HaloのMini PCと普通のNASを別々に購入した方が自由度は高いと思う。
128GBモデルは評価が変わる
128GBモデルになると話は変わる。
GPUが64GB近いメモリを消費したとしても、なおシステム側に十分な余裕を残せる。
これなら、
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Qwen 3.6 35B
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ComfyUI
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Embedding
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RAG
などを現実的に運用できる。
ただし、その時点で使い方は完全に
「AIワークステーション」
である。
NASは付属機能に近い。
AI用途ならZFSは足枷になる
NASベンダーがZFSを採用する理由は理解できる。
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スナップショット
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チェックサム
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自己修復
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レプリケーション
どれも魅力的だ。
しかしAI用途で見ると事情が違う。
保存するものの多くは、
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GGUFモデル
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Dockerイメージ
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OCIレジストリ
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ベクトルDB
などだ。
これらは巨大ファイルが中心であり、ZFSでなければならない理由はあまりない。
むしろ、
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メモリ消費
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管理の複雑さ
を考えると、Ext4やXFSの方が扱いやすいケースも多い。
もし私がこの製品を買うなら、まず付属OSを消し、Ubuntu Serverをインストールし、Ext4で構築すると思う。OSが勿体無いかもと思うかもしれないが、今のAIって、機能の構成が今日古くなるということがあるので、事前に設定されているメリットは実はあまりない。事前に設定されているアプリを使うより、常に最新のアプリを使い続けるほうがいい。ちょっと敷居が高いかもしれないが、この製品を導入できる層ではそれは大したことはないだろうし、逆に求められていることかもしれない。
AIサーバとNASは本来別物
そもそもAI用途とNAS用途は要求が違う。
NASは、
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データを安全に保存する
ことが仕事だ。
AIサーバは、
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メモリをできるだけGPUに回す
ことが仕事だ。
この二つは似ているようで全く違う。
特にUMA環境では、メモリがRAMにもVRAMにもなる。だからこそ、AI以外の用途にそのメモリを使うのは少しもったいなく感じる。ファイルサーバやバックアップサーバなら、中古サーバでも十分だ。仮想化基盤なら、大容量DDR4やDDR5を積んだ普通のサーバの方が向いている。Strix Haloの価値は、やはりAI処理にある。
もし、どうしてもAI環境とNAS環境を同一筐体に集約したいのであれば、QNAPなどのように、dGPUカードを増設できるもののほうが、
dGPU VRAM AI用
RAM : OS、NAS用
とすることでメモリの相互効率利用はできないが、メモリの取り合いが防げる。ただし、AIで使う場合もVRAMだけではなく、RAMも使うので、通常のNASで必要とするメモリより、追加メモリを増設しておくことに越したことはないのだが。
N5 MAXの正体
N5 MAXをNASとして評価すると、AIとNASがメモリを奪い合うという問題が見えてくる。しかし視点を変えてホームラボサーバとして見ると評価は大きく変わる。16コアCPU、128GBメモリ、10ベイのストレージを備えた小型サーバは非常に珍しい。AI、仮想化、コンテナ、ストレージを一台に集約できる可能性がある。つまりN5 MAXの正体はAI NASではなく、AI時代のホームラボサーバなのではないだろうか。
結論
N5 MAXは面白い製品だ。
しかし、
「NASだから買う」
製品ではない。
買う理由はあくまで
「Strix Haloが欲しい」
であるべきだと思う。
もし従来のNASの機能がストレージに必要ならStrix HaloのMini PCと通常のNASを別々に用意したほうがいい。
NAS機能はおまけだが、Strix Haloは64GB RAMを搭載したNUCを2台動かす程度の消費電力でありながら、AI推論性能を持ち、さらにNVMeやHDDを同一筐体に搭載できる。常時稼働前提で考えると非常に魅力的な構成だ。
AI NASという名前に引っ張られると本質を見失う。
この製品は、NASにAIを載せたものではなく、AIワークステーションに10個のドライブベイを載せた製品だと思う。
もし企業用途で、
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NAS機能
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dGPUによる高性能なAI処理
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拡張性
を重視するのであれば、価格や消費電力はかなり大きくなるものの、比べものにならない高性能なdGPUを搭載できるQNAPやPCIe拡張可能なNASサーバの方が適しているだろう。
また、これらの構成であれば、
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VRAMはAI用途
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RAMはOS、ZFSやNAS用途
と役割を分離できるため、Strix HaloのようなUMA環境で考慮する必要があるメモリの競合を避けることができる。
一方でN5 MAXが狙っている市場は少し違う。
N5 MAXの競合は、価格、性能的にもQNAPなどのAI対応NASではなく、むしろNUCやMini PC、あるいはProxmoxサーバなどのホームサーバ向け機材ではないだろうか。
128GBモデルであれば、価格帯的にも中小企業向けのローカルLLM環境や、省スペースな一体型ホームラボとして十分に魅力がある。AI時代のホームラボは、この1台で完結してしまうかもしれない。
もちろん、この製品は買ってすぐ使うような家電ではない。AI環境、仮想化環境、ストレージ環境の設計と構築は必要になる。そのため企業で導入するのであれば、構築実績のあるベンダーやSIerの支援が必要になるだろう。
しかしホームラボ用途であれば、むしろその設計や構築こそが楽しみでもある。
個人的には、今保有している仮想化基盤やホームラボ機材を中古市場で値段が付くうちに整理し、N5 MAXへ集約するのは十分にありだと思った。
AI用途を抜きにしても、
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Ryzen AI Max 395
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16コア32スレッド
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128GB RAM
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NVMe 5ベイ
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SATA 5ベイ
を備えた小型サーバとして考えれば非常に魅力的だ。Proxmoxを導入するだけでも強力な仮想化基盤になる。
一般的なStrix Halo Mini PCはNVMeが1〜2本、容量も2TB前後で終わることが多い。その点、N5 MAXはストレージ容量の制約がほぼなく、仮想化基盤との相性も良い。そういう意味では、AI NASというより、AI時代のホームラボサーバと呼ぶ方がしっくりくる。
唯一の問題は、本体価格ではない。
5本のNVMeと5本のHDDを何で埋めるのか、そしてその費用をどう捻出するのかである。おそらく最後に頭を抱えるのは、本体価格ではなくストレージ代の方だろう。